「真理は生きている」創立責任者のことば
真理は常に相反する二面をそなえている。たとえば、愛は限りなく赦す心であるが、こらしめることを知らない愛は、真の愛ではない。あるいは神を信ずる者は、主の御心とあれば一切の成算を無視して突進する勇気を与えられるが、それは周到な計画と準備を頭から否定することではない。また真理は人に聞き入れられないということの中に、預言者とイエスと使徒たちの苦闘の根源があったが、逆に、真理のみが時の試練に耐えて(すなわち真実なる魂の中に宿り、絶えることなく継承されて)最後まで勝ち残る、ということも本当である。
このように相反する二つの命題が同時に成立すること、すなわち真理の弁証法的性格は、原理的にはすでに、古くから知られていることであるが、実際には、真理の一面だけを一方的に強調することに基づく誤謬が、われわれの世界に充満しているように見える。
高橋三郎『ルターの根本思想とその限界』山本書店、一九六〇(一九八九年再版)、p.9
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